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2024年6月4日、FKJの来日公演が大阪・なんばHatchで開催された。2023年のフジロック以来となるジャパンツアーは、東京・大阪ともにソールドアウト。初日の大阪も最高の盛り上がりをみせた。
ビジュアルとサウンドがマッチした、シネマティックなライブ
ライブのSEで、The Egiptian Lover “Freak-A-Holic”や Hot Toddy “In The Genes”といったファンクやディスコハウス系のエレクトロが流れるなか、開演を待つ。アーティスト側がセレクトした楽曲を聴くのは、音楽ファンにとって特別な瞬間だ。
昨年のフジロックではRED MARQUEEで入場規制がかかるほど人気だったFKJ。なんばHatchの熱気もそれに劣らず。19時40分ごろ、ふわっとステージに現れたFKJに、会場から歓声が上がる。いよいよ開演。
“Tadow”や”Tui”といった人気曲も披露され、観客を魅了した。
個人的に、大好きな”Go Back Home”が演奏されたことがとても嬉しかった。新旧のFKJの世界観を満遍なく体験できるライブだった。
ラッパーBasとのコラボ曲、”Risk”も演奏され、観客を盛り上げた。
アンコールで会場のボルテージは再びマックスに。”Do you know what you want?”とリクエスト形式のアンコールで、会場とステージの温かいやりとりも楽しめた。
VJとサウンドの融合が素晴らしい
FKJのコージーなイメージにぴったりのVJがサウンドにマッチしていたのも印象的だった。密林の嵐、雨上がりの木々のざわつき、夜明けといった情景が映し出され、まるで南国に旅行に来ているような気分になった。
FKJが演奏するグランドピアノにバックの映像が反射し、美しい自然のなかで演奏しているように見える。 「Cercle(セルクル)」のウユニ塩湖ライブを間近で鑑賞しているようだった。
ひとりでバンドサウンドを構築する、音の天才
私は今回初めてFKJのライブに行ったが、これまでYouTubeでたくさん動画を視聴してきた。しかし、いざ会場でステージのセットを目にし、楽器と機材の種類の多さにあらためて驚いた。
私の席から見えただけでも、
- グランドピアノ
- サックス
- エレキギター
- エレキベース
- シンセサイザー(2台)
- 機材(リズムマシン/サンプラー・パッドなど4台)
- エフェクター(ルーパー 2台、ワウとマルチエフェクター各1台)
と、これだけの楽器を一人で操るFKJに圧倒された。まるで一人でバンドを構築しているようなその姿に、「これを一人で?」と驚かされた。
大げさではなく、FKJはひとり5役程度をこなしながら、ステージで演奏しているわけである。脳内の構造を知りたい、と本気で思った。
楽器は独学、映画音楽を学ぶ
FKJは7歳でサックスを両親にプレゼントされるも、そこまで真剣にはなれず、1年ぐらいで遊ぶのを止めてしまう。その後6年間は何も演奏しなかったそうだが、本格的に作曲をしようと12歳の時にギターをスタート。どうやらティーンになってから楽器を本格的に学び始めたようだ。それも独学で!
過去のBillboad Japanのインタビューでは、「ギターを重ねていくうちに奏法が近いベースを始め、ドラムの音が欲しくなり自分で叩き、シンセサイザーを触ったことでピアノを弾き始めた」といったことを語っている。
このインタビュー、楽器好きにはとても興味深い内容なのでぜひ読んでみてほしい。
作曲方法や最近のフェイバリットは?- フレンチ・エレクトロの重要人物FKJにインタビュー(Billboard Japan)
FKJのようなアーティストは、大抵クラシックピアノからスタートして、他の楽器に派生していくことが多い。でも彼は、いきなりサックスからスタートし、電子楽器を経て最後にピアノに取り組んでいる。各楽器の共通点や特徴を見出す能力が秀でているのだろう。
また、FKJは全楽器のレベルを維持しているのが驚異的だ。複数の楽器を演奏できる人は多いが、それぞれのレベルキープをするの非常に難しい。ほとんどの人が全楽器を両立しようとは思えないはず。自分が一番得意だったり、好きだったりする楽器のスキルを伸ばしていき、他の楽器はたまに演奏する程度、ということが一般的だろう。彼のように全ての楽器で高いスキルを持ち続けるのは、本当にすごいことだ。
まとめ
会場には、楽器を弾いていそうな人も多かった。そんな人には、とても刺激になるライブだったのではないだろうか。実際、私も翌日から楽器をしっかり練習し始めている(笑)
また機会があれば、ライブに行きたい。”I’ll come to Osaka again!”の言葉を信じて、次回の来日公演を楽しみに待っている。