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”Z世代”の天才ヴァイオリニスト「ヨハン・ダールネ」初来日公演が最高すぎて、もはやロックだった

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Johan Dalene
(Photo from: Carl Nielsen International Competition.com )

久しぶりにクラシック・コンサートへ!年3〜4回ペースでオーケストラ鑑賞に足を運んでいたのに、2019年はバタバタですっかりご無沙汰。こちらが今年初めての公演となった。

◾️新日本フィルハーモニー交響楽団「トパーズシリーズ」(2019年11月8日/9日)
◾️曲目
グリーグ:序曲「秋に」 op. 11
ニールセン:ヴァイオリン協奏曲 op. 33*
チャイコフスキー:バレエ音楽『眠れる森の美女』より抜粋
◾️スペシャルゲスト
指揮:ニコライ・シェブス=ズナイダー/ ヴァイオリン:ヨハン・ダールネ

バレエやオペラは「ダンス・ミュージック」の元祖。やはり生のオーケストラ演奏にかぎる!チケットを取ってくれた友人と久しぶりに会えることと『眠り森の美女』をフルオケ鑑賞できることにワクワク「すみだトリフォニーホール」へ。眠れる森の美女のラストは特に華やかで大好き。ランチで喋りすぎて開演5分前に会場到着、あわただしく席に着く。まさかこの公演で衝撃的な出会いが待っているとは知らずに。

 

ヨハン・ダールネって、一体何者??

新日本フィルの表現力豊かなグリーク「秋に」にうっとりしたところで(やっぱこの曲良いよね、と再確認)、次は「ニールセン:ヴァイオリン協奏曲 op.33」。若手ヴァイオリニストが笑顔で登場!ヨハン・ダールネ18歳。彼についてなにも知らなかったので「カッコいい男の子だなぁ」くらいに思った。

プロフィールに、「使用楽器はアンデシュ・スヴィー公益基金より貸与されているストラディバリウス”スペンサーダイク”(1736年製)」とあったので選ばれし者だとは把握できた。カール・ニールセン国際音楽コンクール2019優勝の記述からも「正統派なクラシック奏者なんだろう」と予想。しかしそのふんわりした予想は一瞬にして吹き飛ばされる。彼の演奏は「オーディエンス」全体の期待の上を行く、ジャンルを超えたモノなのであった。

 

ニールセンのヴァイオリン協奏曲???

ヨハンのヴァイオリンの話の前に、ニールセンについて。私はニールセン楽曲に対する知識は皆無だった。エントランスで頂戴した公演パンフレット内のコラムをさっと読むと、そこには「不思議な作曲家」「作品を聴いていてもいまひとつ内容が頭に入ってこない」との形容が。これは本当にピッタリで、「こんな曲だよー!」と誰かに歌って説明するなんてことはまず無理(笑) 喜怒哀楽が入り混じり次々変化する、情緒不安定にもみえる人間の情感を美しく表現したような楽曲。プログレやノイズミュージック、マニアックな電子音楽など難解な楽曲が好きな人には刺さる作曲家かもしれない。

 

ヨハンの驚異的な集中力と創造性

ヴァイオリンのプロのソリストは、楽譜を見ずに「暗譜」で演奏に挑むのが一般的。でも、この超意味不明な曲を頭にインプットしさらに自分のものにするというのは異次元に凄いことなんじゃないかと思う。私の話で申し訳ないのだが暗譜が全然出来ないので、以前暗譜とはについて自身の先生に質問したことがある。「(人によるけど)その曲の譜面を書き起こせるレベルまで覚えることが暗譜って言う人もいるのよ」なんて話をしてくれたことをふと思い出した。
また楽曲に独自の解釈をいれる創造性も素晴らしい。こういったセンスは講師からコピーできるものではないと思うし、自身が様々なものから取り入れて養ってきたものなのではないだろうか。彼の演奏から「アーティストとは何か」を感じた。

Johan Dalene, 1st prize #Nielsen2019 – final performance

 

ロックスターさながらの演奏スタイル

ヨハンの演奏方法で面白いのは、会場中を見渡しながら弾くところ!協奏曲や尺の長い楽曲のソリストがこのような演奏をするのを、あまりみたことがない。だいたいのヴァイオリニストは自分の世界に入り込み、ほとんど目を閉じたまま弾くことが多い。ヨハンはべつに客席を見ているわけではないのかもしれないけれど、見回すことでオーディエンスは見られているように感じるし、会場全体を彼のものにしてしまう。ロックバンド系アーティストは観客に目を向けて演奏することが多い。会場の熱はさらに盛り上がるし、オーディエンスがライブに陶酔しやすい。この状況にヨハンの演奏スタイルは似ている。ロックで例えるなら、クラシック楽曲を自身の演奏によく取り込むMUSEあたりかなと思うんだけど、どうだろう?

Muse – New Born [Live From Wembley Stadium]

 

ヨハンのルーツ

なぜ18歳でヨハンはこんなにも堂々と自分のスタイルを確率したのか。それには彼の生い立ちが影響しているのかもしれない。彼はプロのミュージシャンの両親(父:チェロ、母:ピアニスト)の元、スウェーデンに生まれる。たまたま地元のノルヒェーピングに素晴らしいヴァイオリンの先生がいたこと、また、父が自分と同じ楽器を息子にやらせることに気が進まず、「まずは1年間バイオリンをやってみたら?もし楽しくなかったらチェロに代えなよ」という感じで、まずヴァイオリンをやらせたのだそう。そして、そのままチェロにチェンジすることなく今にいたる。

4歳でヴァイオリンを始めたヨハンは、その3年後にはなんとプロの協奏曲デビューを果たしている(ナニソレ、異次元すぎるから)。Stradのインタビューでコンペティションに挑む際のメンタル面については「8歳ごろからコンペティションに参加していることが、慣れさせている」と回答している。音楽以外にハマっていることはサッカーだと言い、18歳の少年らしい一面が垣間見えてちょっと安心(笑)

(こちらのふたつの動画、凄すぎて呆然と全部見ちゃった。)

Tchaikovsky – Violin Concerto (Johan Dalene)

Johan Dalene’s journey to the finals!

 

各界のZ世代の躍進

タイトルに「Z世代」とつけたが、やはりヨハンにはこの特徴が多々ある。Z世代は大まかに1990年代後半から2000年代生まれをさす。この世代はデジタル/ソーシャルネイティブで、価値観が他の世代とは異なりより自由で多様性にとんでおり、「既存のルールにとらわれない」「独自のスタイルを好む」傾向にある。Z世代は何をやるにしても他の世代よりも効率が良く、自分のスタイルの構築スピードが早いと感じる。ミュージシャンで言えばビリー・アイリッシュ、将棋界でいえば藤井聡太さんとかかな。ヨハンの演奏を見て、彼はまさにZ世代のスターだなと感じた。

ここからは私の想像や希望なのだが、ヨハンはクラシック界を牽引することは間違いなく、また、他のジャンルにも影響を与えるんじゃないかと思う。一流ピアニストでありテクノ楽曲もこなすフランチェスコ・トリスターノみたいな感じで。また、スウェーデンは電子音楽大国でもあるので、ヨハンが何か影響をあたえてくれたらシーンがより面白くなるんじゃないかなと勝手に想像したのだった。私はすっかり大ファンになってしまったので、次の来日公演が決まれば必ず行こうと思う!

スカイツリー

余談ですが、すみだトリフォニーホールから錦糸町駅に向かう途中、スカイツリーがこんな感じでエモい景色で見えます。また新日本フィルの公演も観に行こう。やっぱオーケストラっていいなー!幅広いかたにぜひ足を運んで欲しいです。

 

<Source>
 Johan Darlene website

The Strad: Players of tomorrow: Johan Dalene

新日本フィルハーモニー交響楽団:ヨハン・ダールネ氏(ヴァイオリン)インタビュー #612 トパーズ

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この記事を書いた人

音楽・楽器演奏を愛するWebディレクター、一児の母。経験楽器はバイオリン、ピアノ、フルート、エレキベース、ハープ、DJ(CDJ/PCDJ)などなど。楽器や機材に囲まれて暮らしています。
アマチュアオーケストラやバンドに参加したり、BarやClubでDJしたり。幅広い活動を通じて出会った方々から得た知見をもとに、記事を企画・更新しています。

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