Netflixで配信中のドキュメンタリー、”FYRE 夢に終わった史上最高のパーティ”を視聴した。サブタイトルの「夢に終わった史上最高のパーティ」をみて、「あぁ、あの当日キャンセルになった豪華フェスのことかな」と、名称は忘れていたがすぐ頭にうかんだ。
それほどに約2年前の ”FYRE(ファイア) FESTIVAL” 騒動はインパクトがあった。音楽フェスの中止は稀に起こりうるが、開催数ヶ月前には決定、公式アナウンス後にチケット返金など何かしら対応があるのが常識だろう。
しかしこのFYRE FESTIVALは違った。
“FYRE” Netflixの紹介ムービー
BBCの記事には、FYRE FESTIVALに関して以下記載されている。
Fyre Festival: Inside the world’s biggest festival flop(BBC)
Tickets cost up to $100,000 (£75,000) and guests who booked were promised luxury accommodation and “the best in food, art, music and adventure” in the Bahamas.
(抄訳:チケットの価格は最高10万ドル(75,000ポンド)で、予約したゲストはバハマでの高級宿泊施設や ”最高の食事、芸術、音楽、そして冒険”が約束されていた。)
最高$100,000(2019年1月20日レートで約1,097万円!)と規格外に高額なチケットも販売され、誰もがラグジュアリーなバカンスを想像しただろう。バハマ絶海の孤島で、Major LazerなどのLIVEを楽しみ、シーサイドでシャンパンを片手にチルアウト、夜は特設ヴィラでグランピング。
最高にSNS映えするバケーションのはずだった。
蓋を開けてみると、信じられない悪夢の連続
会場はFYREのプロモーションビデオに登場する島とは別の島で、工事も進んでおらず未完成。最悪なことに運営側がフェスの中止を決定したのが開催当日に参加者が会場入りしたあとだったため、参加者が島に取り残される事態に。
約束されたはずの高級ディナーは、まさかのチーズサンドウィッチ。オフィスや学校に持参するランチレベル。。
The dinner that @fyrefestival promised us was catered by Steven Starr is literally bread, cheese, and salad with dressing. #fyrefestival pic.twitter.com/I8d0UlSNbd
宿泊施設はなんと避難用テント(しかも雨でマットレスがずぶ濡れ!)。電気も通っておらず、寝食もままならない会場に取り残された来場者はパニック状態。
すぐに来場者がSNSでシェアし始め、フェスの惨状が一気に拡散。世界中のメディアも取り上げることとなった。
※以下番組内容に触れています。前情報なく鑑賞されたいかたはお避け下さい。
著名ラッパーやスーパーモデルが広告塔
番組では FYRE共同設立者のビリー・マクファーランドとラッパーのジャ・ルールの出会いにも言及している。当初の目的は、バースデーパーティなどにアーティストへ出演依頼ができるアプリのローンチだったが、音楽×リゾート体験型フェス である”FYRE FESTIVAL” に事業の中心がシフトしてしまったようだ。
制作されたプロモーションビデオには、ケンダル・ジェンナー、ベラ・ハディット、ヘイリー・ボールドウィンなどスーパーモデルが登場する。この映像を見たら「やたらリュクスなフェスなんだな」と感じるだろう。
FYRE FESTIVAL のPV(youtubeに公式サイトが残っているのも驚く。。)
ドキュメント内で、ある当事者は、
音楽フェスは12ヶ月前から企画立案と資金集めを始める、今回は核心となりチームが招集されたのは6週から8週前
と語っている。成功が難しいことは3ヶ月前にはわかっていたが、中止できなかったのだ。
また、広告とは全く違うと知りつつ誇大広告を続けたことで、個別訴訟を起こす参加者も現れた。確かにこのPVからは当日モデルも参加するかのように見える。しかもプライベートジェットで島に行けそうに見えて、LCCレベルの航空機だったりと、参加者は出発時点で嫌な予感はしていたのではないだろうか。
結果的にインフルエンサーも訴えられる事態に。彼女たちもアサインされPVに出演したのであって、まさかフェスがこのようなかたちで頓挫するとは考えも及ばなかったはず。なんとも不憫である。
イメージ先行の危険性
インフルエンサーのポストをきっかけにフォロワーが消費行動に走ることは当たり前となった。影響力は絶大だ。セレブリティが発信する情報の実態が不明瞭なこともあるのだと感じた。こういった事態が今後起こらないとも限らないのが怖い。
インタビューに登場する当事者にとっては地獄のような経験だっただろうが(特にバハマのレストランオーナーの女性は可哀想で、心優しい彼女の現実がどうにか明るい方向へ行かないかと願った。)、ドキュメンタリーとしては大変興味深い内容だった。
なぜ数ヶ月前に中止できなかったのか、ビリーの過去と現在、フェス中止後の顛末については本編をみてほしい。
Netflix “FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー”