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ダンスミュージック界のワークシフトと、アムステルダム”Breakfast Club”にみる多様化

DJアヴィーチー、プロディジーのフロントマン キース・フリント。天才ミュージシャンが突如としてその人生を終わらる悲劇が続いている。また今年は、大物テクノDJが体調を崩し入院したことをSNSで報告しているのを何度か見かけた。ダンスミュージック界はハードワークで、精神的にも過酷なイメージがある。

ダンスミュージック界に蔓延る、メンタルヘルスの問題

最近、DJ MAGの記事「メンタルヘルスはダンスミュージックで最も緊急な課題(Mental health is dance music’s most urgent issue)」を読んだ。記事内では有名テクノDJのLuciano(ルチアーノ)が、タイのリトリート施設で療養するに至った経緯や、現在の活動について語っている。

2017年、ルチアーノは体調不良で入院したが、退院後にアルコール・薬物といった悪しき習慣を繰り返してしまったそうだ。ある夜、彼はホテルの部屋でPCを開き、リハビリテーション施設を探し始めた。精神的にも肉体的にも限界にきていて、ついに専門家に委ねることにしたのだ。彼はタイのチャーン島にあるDara Rehab Centreを選んだ。療養生活は想像以上に苦労したが、体は順調に回復し音楽に対する情熱も戻ってきたのだという。

そして2018年、彼の友人であるアヴィーチーの悲劇がきっかけとなり、ルチアーノは自身の体験を公表することに決めた。ダンスミュージック界で苦しんでいる全ての若者達のために。彼は自身(Lucien Nicolet名義の)のfacebookに決意をポストしたのだった。

「私はダンスミュージックに対してより責任ある立場であり、より健全な環境を作る必要性に気がつきました。なぜならダンスは本来とても素晴らしいもので、健康的であるべきだからです」

カンファレンスで自身の体験をシェアするルチアーノ

 

ルチアーノのDJセット。スイス系チリ人の彼のアイデンティティを思わせるラテン調のプレイは楽しい!

 

アーティスト以外も抱える、働き方の課題

有名DJやミュージシャンの死が大きく報道される一方、サウンドチェッカーやブッキング担当者などの業務を担当する人々もメンタルヘルスの問題を抱えているそうだ。ジェットラグ、早朝のフライト、AM4時のDJセット、ソーシャルメディアを成功させることや金銭的なプレッシャー。レコードの売り上げは年々落ちているが、フェスの数は増加。ひと夏に10を超えるフェスのブッキングも相まって、24時間年中無休に近いほどの過酷な勤務形態が続く者もいるらしい。業界内はスモールカンパニーが多く、ヒューマンリソース系の教育が徹底されてこなかった。現在ではハンドブックなども作成され始め、この業界にも「働き方改革」は徐々に広まりつつある。

 

若年層のクラブ離れ

記事内にはこのようなことも書いてある。

The industry is contracting — in part because many young people have become health-conscious, favouring Instagrammable daytime pursuits over the clammy environs of nightclubs — which means that it’s harder to make money, and everyone is struggling to keep their heads above water.

若年層の健康思考が高まり、人混みでジトジトしているクラブよりもインスタ映えする昼の楽しみが好まれ出したことで、ダンスミュージック産業は徐々に縮小している。

パリの美しい街並み、カッパドキアの気球が見えるテラス席でのディナー、ビーチリゾートを楽しむフィットネスモデルさながらのスタイルのインスタグラマーなど。SNSには非日常的でカラフルなポストで溢れている。確かに照明が暗く人混みのクラブはインスタ映えするとは言えない。

旅行系の人気インスタグラマーのポスト。

2016年のmixmagの記事、「調査結果が示す、若年層のクラブ離れ(UK SURVEY SUGGESTS YOUNG PEOPLE DON’T LIKE CLUBBING)」にも、似たよう記述がある。

英・ガーディアン紙は、18歳から35歳の読者196人にナイトクラブに関するアンケートをとったところ、131人が行きたくないと回答したのだという。「値段が高い」「健康面や心理的に」など様々な理由から嫌煙しているのだそう。また、ある回答者はSNS上の写真などを通して、あまり行きたくないと考えているのだそう。この調査は対象人数も少なく、意見も偏りを見せているけれど、静かな環境で友人とゆっくり飲みたいと考える者が増加傾向にあるのは確かなのかもしれない。

 

ヘルシーにダンスミュージックを楽しむ!

ヘルシー思考は若年層だけでなく、全世代に広がっている。お酒を飲まない人や落ち着いて音楽を楽しみたい人のためのエリアを整備するフェスも増えているようだ。そのような「ウェルネスエリア」を設けているフェスでは、年配のDJがプレイし、ヨガや瞑想のワークショップが行われることもあるんだとか。

ダンスミュージック=アルコール、深夜といったイメージを打破するモーニング・イベントも現れている。最近注目しているのはアムステルダムの”Breakfast Club”だ。このイベントは朝AM7時から始まり、18時に終了する。

直近だとADE(ADE(アムステルダム・ダンス・イベントの略。1週間に渡ってクラブ以外も含む様々な場所でダンスミュージック・イベントが開催される。)期間中の10月19日(土)、20日(日)、クラブRADIONでBreakfast Clubは開催される。なんと19日は15時から18時のメインアクトはPeggy Gou

 

Breakfast Clubのコンセプト

 

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With a little over a month to go, we’re very excited and delighted to present you the timetables of our two-day ADE bender! 👀 🔜 Tickets for day 2: link in bio.

Breakfast Clubさん(@breakfastclub_amsterdam)がシェアした投稿 –

Breakfast ClubのWebsiteにはこう書いてある。

Over the last three years, this has caused for some unforgettable mornings in Amsterdam’s thriving underground.
On the culinary front, we serve tangible tenderness with our renowned breakfast buffet. Ever enjoyed healthy shakes and wholesome bio-delicacies just meters away from a rocking dancefloor? They say breakfast is the most important meal of the day; we couldn’t agree more!

アムステルダムの活発なアンダーグラウンドカルチャーの中で、素晴らしい朝のムーブメントを3年に渡って起こしてきました。料理の面では、体に優しくて美味しいブッフェを提供しています。ダンスフロアから少し離れたところで、ヘルシーなスムージーやオーガニックフードを食べたことはありますか?朝食は1日で最も重要な食事だということに賛成できない者はいないでしょう!(※抄訳)

Breakfast Clubはデイタイムにヘルシーな食事とともにダンスミュージックを楽しもう!というポジティブなイベントなのだ。ADE期間のBreakfast Clubは4年連続で開催されていて、Peggy GouのDJセットも3回目(彼女もこのイベントが好きなのかも)。2日目にはFemale DJのCourtesyの出演が決まっている。Courtesyは先に紹介したDJMAGのメンタルヘルスに関する記事内で、2年ほど飲酒を完全にやめていると語っている。

 

デイタイムムーブメントは広がる?

日本にもBreakfast Club的なイベントがあれば参加しやすいのに、と家庭のあるアラフォーの私はしみじみ思う。昔から夜しっかり睡眠を取らないと翌日の活動がきついタイプなので、20代であってもデイタイムイベントは嬉しかったかもだけど笑

もし私がBreakfast clubのような都心のデイタイムイベントに参加したら、18時までは少量のアルコール(アルコールの提供が無いならノンアルコール)と軽食でテクノを楽しみ、イベント終了後に友人や家族と美味しいディナーを別の場所に食べに行くと思う。それか普通にそのまま家に帰ってゆっくりするかも。クラビングの常識では、ダンスミュージックを楽しむのは深夜、1日の活動の本当に最後の時間だった。ただでさえ疲れている深夜、人混みや騒音で気力を奪われる人も多いと思う。デイタイムに好きな音楽を楽しんで、イベント終了後の予定に選択肢の幅がある。この感じが嬉しいテクノラバーは多いのでは無いだろうか。

20代からDJをしている友人は、深夜帯のDJセットが最も好きなのだそうだ。もちろん深夜帯のイベントにはその良さがある。ただ、選択肢のひとつとしてセンスあるデイタイムイベントも増えれば嬉しい。それが参加する側、そしてダンスミュージック界で働く人たちにもヘルシーであれば、win-winだと思う。