デジタルトランスフォーメーションという言葉を耳にする機会が急に増えた。ぼんやりとしか意味を把握しておらず、さすがに押さえておかないとやばいな、、、ということで、「デジタルの未来」事業の存続をかけた変革戦略を手に取った。
デジタル化は全業界に関係大アリ
デジタルトランスフォーメーションとは、最新科学技術を活用した事業全体のデジタル化である。事業全体とは「従業員、顧客、サプライヤー、事業のパートナーなど含む事業を取り巻くエコシステム全体に及ぶ」と本書で定義づけている。NetflixやSpotify、UBERといった新興企業(アタッカー)が、ビデオレンタル事業やCDショップ、タクシー会社など既存のマーケットリーダーに猛追したのは記憶に新しい。これらアタッカーは消費者には利便性が高く好印象なサービスだが、既存のマーケットリーダーには驚異でしかない。このような驚異が小売や金融、ヘルスケア、エネルギーなどといった全業界に迫っている。
海外企業の事例から知ること
「デジタルの未来」では海外の大企業からスタートアップまで様々な事例が紹介されている。自身が在籍する業界や、関心のある分野が必ず出てくるはずだ。私個人としては、スワロフスキーが印象に残った。スワロフスキーは工場をリノベ、ロフトオフィス化して、テック系スタートアップ企業と自社の開発陣が一緒に働ける環境を作ったのだそうだ。有望なアイディアにはスワロフスキーが投資し、パートナーシップを築いているとのことである。
価値観が ”所有から「使用」”へ
デジタル化成功へのキーは、”顧客ファースト”にあるらしい。顧客の希望にいかにスピーディに応えるかが重要となる。例として自動車業界の変革は、個人の価値観が ”所有から「使用」” に加速していることも原因だと言われている。使いたい時にサービスが利用できればそれで良く、煩わしいサービスが不要なのだ。この”所有から使用” への動きは、ほとんどの業界に言えるこでもある。NetflixやUBERなどのアタッカーはこの動きをいち早く掴んだ企業である。
”評価”も選択肢に加わる
顧客は利便性に加え多様な選択肢を検討するようになった。購入前には入念にリサーチを行い、いざ購入する際にもチャネルを切り替える。マッキンゼーの調査では、消費者の94%が購入前に製品と価格を積極的にリサーチしているらしい。その70%がコメントと評価をチェック、評価が思わしくないと87%が買うことをやめるのだそうだ。
”得”である状況がさまざま
身近な例に落として考えると、航空会社のマイレージが例にあると思う。私は最近、航空券代を支払っていない。マイレージでフライトを予約しているからだ。このマイレージを旅行やクレジット決済によって貯めるだけでなく、製品やサービスの購買・利用経路を都度選んでマイレージに変換している。(この購入方法は事例サイトがたくさんあるので、そちらを参考にしてみてほしい。とても面白い。)何年か前は商品を最安値で手に入れられればそれでよかったのかもしれない。しかし、今は各個人によって”得”となる購買経路まで異なり、選択肢も増えて複雑になっている。ビッグデータを正確に読みとることができる優秀なデータ解析担当「トランスレーター」を採用することが急務だ。
現状と課題
本書では、自社がどのレベルなのか把握するポイントが解説してあり、レベル感によって何から手をつけるべきか言及している。デジタル化への道筋がざっくりではあるが導かれておりわかりやすい。本書内に紹介されていた企業を自分で調べてみても面白いかもしれない。
「自分は営業職だから」とか「エンジニアではないから」という考えが、今後は通用しにくくなりそうだ。どのような職種の人にも入門書として読んでおきたい本だと思う。