2019年2月8日公開予定の映画「ファースト・マン」
人類初の月面歩行に成功したアポロ11号の船長、ニール・アームストロングをライアン・ゴズリングが演じる。監督はラ・ラ・ランドのデイミアン・チャゼル。
月への有人宇宙飛行計画「アポロ計画」では、アポロ11号・13号がクローズアップされやすい。アポロ11号は人類初の月面着陸と月面歩行を成功させ、ニール船長が残した「これは1人の人間にとっては小さな1歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という言葉は有名だ。また、アポロ13号の事故が映画化されるなど、この2つのプロジェクトがメディアで取り上げられることが多いように思う。
月面に降り立った経験を持つ人物は12名
アポロ計画は17号まで存在し、月面を歩いた経験を持つ宇宙飛行士はニール船長を含め12名いる。(12名全員についてはこちらのサイトがわかりやすくておすすめ)
最後のアポロ計画である17号に搭乗した宇宙飛行士ユージン・サーナンが、月面に降り立った最後の人物だ。ドキュメンタリー映画「月面に立った最後の男」は、ユージンや彼の家族、かつての同僚へのインタビューや当時の映像で構成されている。アポロ計画についてあまり知識がない私には、とても学ぶことの多い作品だった。この映画は2014年に公開されたが、ユージンは2017年1月16日、82歳で逝去されており現在その姿を見ることはできない。
ジェット戦闘機パイロットから宇宙飛行士へ
ユージンは海軍でジェット戦闘機の優秀なパイロットだった。1961年、ロシアのユーリー・ガガーリンが人類初の有人宇宙飛行を達成し、米ソ冷戦のなか両国の宇宙開発が過熱して行く。その折、ユージンにNASAから一本の電話がかかってくる。宇宙飛行士を募集しているというのだ。彼は宇宙飛行士にチャレンジしたい思いを持っていたため、その話に即飛びつき、過酷なテストや検査を受けにいく。そこから彼の人生は激変していった。
※以下内容に触れています!
彼はジェミニ計画のメンバーとして宇宙を飛行、地球に帰還している。搭乗が決定していたメインメンバーの悲劇がきっかけで、控えである彼の搭乗が急遽決まったのだ。その後アポロ10号の月軌道周遊、17号での月面着陸・船外活動を成功させ、彼は人生で計3回宇宙へ行った経験を持つ人物である。
アポロ10号のミッションは、月面着陸の問題点を見出し解決、続く11号のニール・アームストロングたちの不安を減らすことも目的だった。アポロ17号に関しては選抜テストでのミスもあり、ユージン自身は選ばれることはないと予想していたが、見事メンバーに抜擢される。そもそも宇宙飛行士になった経緯から、ジェミニ9号・アポロ17号への抜擢をみても、運命が彼を宇宙へ導いているように思えてしまう。ドキュメントでは17号の任務を終えてからの人生や活動についても触れられている。
私は月を歩いた、不可能はない
80歳間近でも積極的に講演会に飛び回る過密スケジュール。映画序盤の「情熱や愛を感じることだけを人は続けるべきだ」という発言を見ても、彼は最後まで情熱の中に生きた素晴らしい人物だと感じた。そんな彼からの「可能性は皆にある。挑戦してみることが大切だ。不可能に思える夢でも、諦めないことだ。私は月を歩いた。不可能はない」この力強いメッセージはもっと多くの人に見てもらいたいと感じた。
私同様、アポロ計画や冷戦時代をよく知らない世代は、「ファースト・マン」を見る前にこのドキュメンタリー映画をみると当時の状況も把握できて面白いと思う。宇宙ビジネスが過熱している今、ユージンが月に書き残した娘トレイシーのイニシャル ”TDC” を次に目にする人物は、一体誰になるのだろうか。