「スカイラインズ-危険なビジネス-」は超異質な音楽ドラマ
HipHopなど音楽がテーマの人気ドラマは、意外と多い。最近ヒットした作品といえば「アトランタ 」「エンパイア-成功の代償-」の2作だろう。
“This is America”の大ヒットが記憶に新しいチャイルディッシュ・ガンビーノ(ドナルド・クローヴァー)主演の「アトランタ」。黒人ラッパーと彼を取り巻く友人たちの目線を通し、アメリカの貧困や社会問題に切り込むストーリー。監督は前出 ”This is America”のミュージックビデオも担当した日本人ディレクターHiro Muraiで、全体的にMVを観ているような映像が面白い。
「エンパイア-成功の代償-」は巨大音楽レーベルを築いたライオン一家の愛憎劇。ハリウッド大作も主演する女優タラジ・P・ヘンセン演じる強烈なキャラクター”クッキー・ライオン”、さらっと登場するゲスト陣も名物のド派手なドラマだ。歴代ゲストにはクリス・ロック、リュダクリス、ニーヨ、ティンバランド、ケリー・ローランド、ピットブルなど、錚々たるアーティストたちが。(視聴者としては嬉しい!)
アトランタ、エンパイア両作品ともにブラック・カルチャーや音楽業界を描いているのだが(アトランタは音楽業界要素はやや少なめだけど)、クセがすごいキャラが多いためコメディ色が強い。今回紹介したいNetflixシリーズ「スカラインズ-危険なビジネス-」は、ちょうどこの2作品からコメディ要素を完全に取り除いた「音楽×サスペンス」ドラマ。ビートメーカー、プロデューサーというどちらかといえば裏方の職業にフォーカスしているのも珍しい。
”ビートメーカー”が主役
スカイラインズの主役は天才ビートメーカーの”ジン”。ドイツ・フランクフルトのクラブでのDJプレイが大手レーベル「スカイライン」の目に留まり、専属ビートメーカー/プロデューサーのオファーを受ける。スカイラインのトップはトルコ系移民から大成功を収めるカリスマラッパー”カリファ”。彼には大きな秘密があり、優良企業だったスカイラインはあらぬ方向へと変貌を遂げることになる。
こちらがジンがNative Instruments社の”MACHINE”をプレイするシーン。
(ビートメイキングといえばNI社の”MACHINE”と言って良いほど人気の機種。2009年に誕生したこの機材によって、作曲がよりシンプルで身近なものとなった。)
レビューサイトIMDBで高得点をつけていないレビューに、「ミュージシャンだったり、ラップが好きな人は楽しめる」と言ったコメントがあった。確かにサスペンスをメインにみるとそこまで凝った話ではない。ビートメークや音楽レーベル、センスの良いヒップホップ楽曲などの相乗効果があってこそのドラマだと思う。(結果、私はめちゃくちゃハマったので1日で全話コンプリート!)
「ジャンルはテクノ?」
印象的なシーンは多くあったのだが、主人公ジンがミュージシャンだとわかったときに、会話の相手が開口一番「(ジャンルは)テクノ?」と質問するセリフにぐっときた。さすがテクノ大国ドイツ!ミュージシャン=テクノと連想する国はなかなか無い(笑)ドイツはクラブカルチャーやダンスミュージックが身近なこともあり、スカイラインズ全エピシード通して音楽の使い方のセンスが良い。
ジャーマン・ヒップホップは日本語ラップに似ている?
スカイラインズを観るまでジャーマン・ヒップホップ楽曲は聴いたことがなかったのだが、鑑賞後気に入って掘り下げている。
私はライムスター、KREVA、KEN THE 390、Creepy Nutsなど日本語ラップの楽曲を好んで聴いている。日本語ラップにはどことなく哀愁漂うトラックや、言葉選びが緻密で内容も面白い作品が多く、USヒップホップのメジャーシーンと比べると繊細なトラックが多い印象を個人的に持っていた。Spotifyでジャーマン・ヒップホップを聴いてみて、日本語ラップ好きな方は気に入ると思った。ドイツ語特有の子音をはっきり発音して言葉数が多い感じが、日本語ラップに似ている気がしたのだ。
HipHopではないのだけれど、エピソードの中で流れるこの曲にハマってしまった。
Miss Platnum – Köpf die Flasche
(タッタターララが耳に残って離れない笑)
音楽好き、特にビートメーカーの方にはぜひ見て欲しいドラマ。一気見必須、おすすめです!